Japan Far East Real Estate

Hasegawa Real Estate and Economy, Inc.

日本の不動産に対する外資の判断

私の世代でGSと言えば、ガソリンスタンド、先輩の世代ですと
グループサウンド、現在では、やはりゴールドマン・サックス
なるのでしょうか?
このGSが、日本への不動産投資を加速しています。
かつて、バブル崩壊時の不良債権の処理における「大量の底値買い」
で勇名を轟かせました。

この夏以降、銀座の中央通沿いの複数の不動産をM&Aや単純売買
にて取得しています。
それも権利調整が必要な(=地上げの必要な)、短期の転売には
向かない物件まで取得しています。
つまり一等地ではありますが、相当なリスクを取り、かつ高値で
購入しています。
これは、かつてのバルクで大量の不良債権を買っていた当時を彷彿
させるような、まさに国内不動産会社も唖然!いった状況です。
(国内不動産会社では、取れないリスクを彼らは取っています。)

先日10月6日にも下記のGSによるTOBが発表されました。

不動産ファンド子会社、日興が売却へ、ゴールドマンなどTOB
日興コーディアルグループは五日、東証マザーズ上場の不動産ファンド運営子会社、シンプレクス・インベストメント・アドバイザーズ(SIA)を売却すると発表した。
ゴールドマン・サックスと米系不動産ファンドのエートス・キャピタルが共同で実施するTOB(株式公開買い付け)に応募する。本業の金融業と関連が薄いと判断したためで、売却で日興は約四百四十億円の特別利益を計上する見通しだ。
SIAは日興がグループ全体で四二・五%を保有する連結子会社
第二位株主の三上芳宏氏が約二九%の保有株を売却するにあたり、入札方式で今夏から外資系金融機関やファンドを中心に買い手を募っていた。(日経)

この時のシンプレクス側の株主に対するIR情報を見ますと、

  • これまで、容易に不動産投資事業が儲かったがこれからはそうは行かなくなった。
  • 地方の不動産市場は既に調整局面(下落基調)に入っている。
  • 新興市場の低迷で容易に資金調達ができなくなった。

といったことをGSからのTOBに賛同する理由として発表
しています。
つまり、日興やこのシンプレクスの現経営陣は、今後、今まで
のように儲けるのは既に難しいと感じ、よって今が良い売り時と
判断したとしっかり公表しているのです(笑)。
GSからすると、更に日本での不動産投資を拡大するには、
「(お金は、潤沢にあるが)仕込める担当者が足りない」
「そこで、仕込める組織を育てるより買ってしまいましょう」
ということなのでしょう。
そこで、TOB前の株価の2倍、PBR4倍の株価で
も「人+仕込める組織」がほしかったということでしょう。
さて、ある意味、買われる側と買う側の今後の市況に対する
判断が見事に分かれた訳ですが、どちらの判断が吉とでるの
でしょうか?
国内の業界的には、もう山は越えたと言われていますが、
少なくとも世界のGSの判断は、
(都心に限るとは言え)まだまだ、買いであるとの判断である
ようです。
私が、一つ心配であるのが、この判断が
「世界的な金余りによる無理やり予算消化的な判断でなかったか」
という点と
「GSが日本において過去から現在まで圧倒的に勝ち続けている」
という事実です。
個人でも、どんな優秀な組織・会社でも長期に渡り勝ち続ける
ことは、不可能です。
GSが世界でも他に例を見ない非常に優れた投資銀行であった
としても・・・。
PS.但し、GSからするとグローバルな巨大ポートフォリオ
の中で日本の不動産への投資は、ほんの数%以下であり、よって
日本で失敗しても、全体のポートフォリオには大きく影響しない
ように「グローバルなリスク管理」されているのは事実です。
つまり、
「日本でも損しても上海とシンガポールで儲けたからチャラよ。」
ということをしっかり想定して分散投資しているのです。
それを、状況が根本的に異なる我々一般の人間が彼らと同じ行動を
取ってしまったら、
これは、非常に危ういことになりますのでお気を付け下さい。
長谷川高(デジタル不動産コンサルタントLTD.)