弊社で調査する中古マンションでは、よく日本ハウズィング管理の
物件が出てきます。
我々がこの管理会社が管理する築20、30年と中古物件を調査して
常に感じることは、日常管理はしっかりやっている、しかし
「長期修繕計画」が殆んど組まれていないということです。
当然ながら、これだけの築年数の物件では、分譲当時に長期修繕計画
等というものはありませんでした。
よって、根拠の無い安い修繕積立金でスタートし、未だに築年数の
割には安すぎる修繕積立金しか徴収していないといった状態が続い
ている訳です。(管理費はしっかり取っていますが・・)
大手の管理会社として、果たして日常管理をやり続けるだけで良いの
だろうか?という疑問を何時も感じています。
大規模修繕の提案や耐震診断の提案をしていないのか?と。
その会社が、実は独立系管理会社で最大手企業なのですが、これを
下関のデベロッパー原弘産がTOBをかけ、日本ハウズィング側は、それに
対抗して買収防衛策を株主総会で導入しようとし、株主の争奪戦を
繰り広げています。
2社間の公開されている問答を拝見していると、
日本ハウズィング経営陣の
「マンション管理業は、受身の業種であり、既に成熟産業であり、
管理戸数を増やす以外に成長の余地は無い」といった余りにも
情けない発言が目立ちます。
それが原因か、なななんと、創業者一族は、先日現経営陣に反旗を
翻しました。
以下、その記事です。(以下:日経NET、6月7日記事より)
日本ハウズ創業家、原弘産の提案に賛同
マンション管理大手の日本ハウズィングにTOB(株式公開買い付け)と買収防衛策の不発動を提案している不動産開発の原弘産は7日午前、日本ハウズ株主向けに説明会を開催した。日本ハウズ創業家の井上恵子氏と山口哲央氏も出席し、説明会終了後に原弘産の株主提案に賛同することを正式に表明した。井上家は日本ハウズ株を13.2%保有する大株主。原弘産について「ビジネスプランが非常に具体的」(山口氏)と評価し、27日の日本ハウズ株主総会で買収防衛策を発動しないよう求める原弘産の株主提案に賛同する考えを示した。
これで、原弘産サイドの大株主と創業者の持ち株数は、40%を超える
ことになります。
原弘産の買い付け価格、1株1000円が、日本ハウズィングの本来の企業価値
として適正なのかは私も企業価値評価をしていないので分りません。
しかし、原弘産からすれば、山口、北九州といった地方中心のマンション
分譲事業の将来は明るいものとは思えない状況下、
少なくと、毎年年間売上で約600億円、営業利益で約30億円の
(マンション分譲事業に比べて)相当安定した売上・営業利益をオンできる
のは、買収側に取って意味のあることだと思います。
この不動産不況の中では、長期的に「企業を存続させる」という
ことにおいて(成功すればですが)抜群の選択だと思います。
ただ単純に、安定した企業を取得できるというだけでなく、
多くの場合は、全く期待できない、「相乗効果」も今回は、存在する
のではないかと個人的に思います。
上記の老朽化したマンションの建て替えや耐震工事等々、デベロッパー
的発想に立てば、同社の管理物件を通じてのビジネスチャンスは、
相当あると思われます。
そういったビジネスチャンスには目を向けず、
「管理戸数を増やす以外に成長できない」といった
発言や、かつ管理組合に対してやるべき長期修繕計画や耐震診断の
提案もしていない、言わば、「管理会社として不作為企業」の経営者は、
やはり創業者一族からも見放されても仕方が無いと私には思えます。
この2社の今後には目が離せません。