不動産業界では時々「お化け物件」とか「幽霊物件」と呼ばれる物件が出回ります。
特にバブル期からその崩壊期においては幾つもそういった物件が出てきたと記憶しています。
私にとって記憶に残る案件としては「ミャンマー大使館」、「フィリピン大使館」、「目黒雅叙園」のそれぞれの売却話しです。
私の知り合いには、わざわざミャンマーまで政府高官に会いに行った方もいますが・・・・
個人的には、目黒雅叙園の案件が何度も知合いの業者から持ち込まれたこともあり、特に記憶に残っています。
行人坂の魔物――みずほ銀行とハゲタカ・ファンドに取り憑いた「呪縛」
- 作者: 町田徹
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2013/10/31
- メディア: 単行本
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この「行人坂の魔物」(町田徹著、講談社刊)には、その通称「目黒雅叙園」の顛末記が詳細に書かれています。
まあよくここまで調べたものだな〜と感嘆しました。
正に「土地」に「歴史」有り、かつ「因縁」あり、だと改めて思いました。
この書を読むとやはり当時、私が所属していたデベロッパーに持ち込まれた「話し」は殆どガセネタだったということが分かります。
「あ〜手を出さないで良かった」と。
また、結局、最後の最後に金融機関から債権を買って、(最終的にはシンガポール政府系の投資会社への)転売に成功したローン・スターは莫大な利益を出したようですので、やはり凄いと言わざるを得ません。(過去の経緯において色々とうっかりミス?もあったようですが・・・)
特に、大蔵省の底地を非常に安く払い下げた辺りは、流石だと思いました。
結局ババを掴んだんのは、実は、最後に物件を取得したシンガポール政府投資公社(GIC)だと感じます。
(お金が余ってシンガポール国内はもとより、多のアジアや欧米も高くて投資先が無いということだと思います)
http://jp.reuters.com/article/marketsNews/idJPL3N0N123W20140409
個人的な意見かもしれませんが、そもそも目黒は住宅立地ですし、当該物件は駅からも遠く、坂も急で、賃貸オフィスとして競争力は低いと感じます。
賃料も現在は幾らか知りませんが、将来的には坪単価@1万円以下まで落ちていくのではないでしょうか。
この物件の過去の経緯を読んでいくと、ローン・スターは、創業者一族との問題、及び借地底地、近隣問題をもう少し上手くできなかったものかと思いましたが、やはり「時は金なり」と「急いだ」のでしょう。
しかし、そんな意見は、あくまでも外から見ての評論家的感想であり、日本の企業が誰も手を出さなかった「お化け物件」によくぞ取り組んだものだと感じます。
結果として転売益は数百億円でしょうから凄いものです。
「大きなリスクを取ったからこその莫大なリターンだ」ということでしょう。
この書籍は、不動産の知識がない方には若干理解が難しい箇所もあるかもしれませんが、第一級の経済系ノンフィクションだと思います。
業界のプロの方にもお勧めできる本です。