新東京邂逅記 by 長谷川高

厳しい時代を生き抜く為の資産防衛と不動産戦略

タクシードライバーとセレンディピティ


私は、ビジネスにおける「偶然」というものに時々驚かされます。
皆さんもこれまで様々な「良き偶然」に図らずも助けられたといったことが何度かあるのではないでしょうか。


さて、この「良き偶然」をどうにか招くことができないものでしょうか。最近よく使われる言葉で表現するなら「セレンディピティ」に出会う為にいったい何をなすべきでしょうか。


一つだけ確かに言えることは能動的に行動することがまずは全ての第一歩になるということです。世の中には、無駄な(営業)活動、行動というものはないと感じるのです。


私が起業してこれまでも振り返っても、ビジネスにおける多くのビックチャンスは何時も思わぬ偶然からもたらされているからです。


ビジネスの始まりは大概こんなふうにやってきます。例えば、営業での茶飲み話しの最中に「そういえば、あのプロジェクトはどうなった?」とした話から「実は取引先が苦労しているよ。誰かパートナーを探しているみたいだよ。」とか、「実はそのプロジェクトの継続を諦めて、引き受け手を探しているんだよ。」と、思わぬ方向に話が展開し、そこからビジネスが生まれるといった具合です。
それを分かっているからでしょうか、「雑談こそが大事なんだよ」とおっしゃる先輩経営者に何度か会ったことがあります。


その「セレンディピティが発生する確率」を高めるためには、やはり外に出て、何より人に会うことが大切だと感じます。


営業の基本としても
「メールで済ますよりも電話、電話よりも実際会って話す」
と営業の第一線でよく言われています。
こういった考えは一見効率やスピード重視の現在の風潮に逆行しているのかもしれません。



しかし、成功する発想には常に「逆張り」の精神が必要です。
つまり大多数の人間と違うことを行うことに突破口があるともいえるです。


かつて、私が今の会社を創業し、なかなか業績が上がらないことに悩んでいた時のことです。サラリーマン時代から営業系の仕事をしてきましたので本来営業は得意としていたのですが、その時は、まさに壁にぶち当たっていました。
「何かもっと高率な営業方法はないだろうか」、「もっと効果のあがるやり方はないだろうか」と悩んでいました。


そんな時、こんな不思議な体験をしました。
ある晩、帰りが遅くなったので、青山のベルコモンズの前でタクシーを拾いました。私は、タクシーに乗ると必ず運転手さんと景気のことなど色々な話を必ずします。
その日も、何かの話の弾みから、そのタクシーの運転手さんが、営業所内で常にトップの成績であるということを聞きました。
私は、すかさずその秘訣は何かと聞き返すと「ホテルや繁華街のタクシー乗り場で客待ちをしていてはダメなんですよ。とにかく、走り回ることが大事で、これ以外方法はないのです。」とおっしゃいました。



その時は、「そんなものか」と特に気に留めることもなかったのですが、次の日、同じくベルコモンズ前でタクシーを拾い、雑談もしていると、なんとその日乗り合わせた運転手さんも彼が所属する営業所でトップの成績をおさめていると言うのです。
 

そこで私は、前日と同じように何か秘訣があるかと尋ねてみました。
すると、「都内をぐるぐる走り回る以外の方法はありませんね。ただし、何時にどのルートを走るか、そこにそれぞれの経験から来る工夫がありますが。兎に角ホテルやタクシー乗り場の行列に並んでも待っても駄目ですね。それでは並以下の成績しか上げられません」とおっしゃいました。


二日連続、同じ場所で拾った違うタクシーの運転手さんが、それぞれの営業所でトップであり、また、トップである理由が全く同じであったので、私は少し考え込んでしまいました。



おそらく、どんな業種、業態であっても「営業」という点においては、勝利の方程式はどこも同じなのではないかと思ったのです。タクシー業界も不動産業界も、製薬業界も広告業界も、客待ちをしていてはダメで、誰と会うかという戦略は必要であるものの、とにかく人と接触する以外の方法はないと思ったのです。


壁にぶち当たっていた私は、これをきっかけに基本に戻り、人に会いにどんどん出かけていきました。
 

インターネットが発達し、様々な情報もネット上に多く氾濫しています。ただし、ネット上の情報には質的な限界も存在すると思います。


例えば私が属する不動産業界もインターネット化がすすみ、プロの間でも添付ファイルによって数億、数十億の物件情報をやりとりしています。
しかしながら、メールに添付してやりとりしている情報の質は、やはり「A級」の情報ではなく、「C級」、「D級」の情報なのです。


つまり、「添付ファイル物件」は、所詮、なかなか売れない物件を、「数打てば当たる」とただただ広くばら撒いているといった場合が多いのです。


そして、「A級」の情報、つまり「これは!」と思えるような情報は、何時も時代も誰にとっても「貴重」なのです。そして貴重な情報であればある程、やはり直接フェイス・トゥー・フェイスで手渡されているのです。これは、二十年前も三十年前も、そして今も、同じだと思うのです。




長谷川不動産経済社