新東京邂逅記 by 長谷川高

厳しい時代を生き抜く為の資産防衛と不動産戦略

ユダヤ人移民と山口組三代目に学ぶ生き残り戦略


日本の経済的不況は何故20年以上も続いたのでしょうか?私には何度考えてもその確たる理由が分かりませんでした。


その時々の為政者、つまり政治家のせいにするのは簡単ですが、果たして本当に政治が悪いことが原因でこれだけの不況が続いたのでしょうか。


私の父親が、
「太平洋戦争の時代、一番優秀な者は海軍か陸軍の兵学校、次が兵器を作る技術者だった。中曽根元総理もあれは当時で言えば経理担当者で決して第一級の人物とは言い難い。つまり第一級、一流の程、先の戦争で戦死してしまった」とよく言っていました。
この父親の言う第一級の人物の生残りが、例えばシベリア抑留から戦後帰還した瀬島龍三氏のような方だったのかもしれません。


バブル崩壊時の日本を実質支配していた60代、70代世代の財界人や政治家は先の戦争の生残り世代です。
だから、私はこのバブルの処理に無為な時間を取り、自分の在任中に責任を取ろうとしない経営者や政治家ばかりなのかとも思っていました。


しかし、最近になり、その理由は国内の人口減と高齢化による需要の減少、及び資源高、かつ韓国、中国といったかつての新興国の台頭によるライバルが出現し販売価格が抑えられ・・・・つまり「日本の企業が以前のように儲からなくなった」ということが大きな原因であると感じるようになりました。


それ故に給料が上がらず、よってお金も使わないといった悪循環が「日本の経済」なのです。
更には、この悪い循環は今後も続くと思われます。


では、我々はどの様にこの状況に立ち向かったら良いのでしょうか?別の表現をするならば個々人の、つまり「自分の生計=経済」を如何に維持、安定させていくべきなのでしょうか。
私は過去の歴史にそのヒントがあると感じています。


まず、米国におけるユダヤ人移民の方々の「生き延び方」についてです。
私は「アメリカ・ユダヤ人の経済力」(PHP新書佐藤唯行著)という書籍を読んだ時、非常に合点がいきました。著者の獨協大学国語学部教授である佐藤唯行先生は、ユダヤ人問題の専門家でいらっしゃるのですが、同書において非常に興味深い(米国における)ユダヤ人移民の生活防衛及び利殖方法を解説されています。


我々日本人は、ユダヤ人の方々が特に金融業に長けているといった話しは誰もが耳にしたことがあると思います。実際ロス・チャイルド家が創設した香港上海バンク(HSBC)を筆頭に、欧米において多くの著名な金融関係者を排出しているということは事実です。

しかし同書によると、19世紀後半のアメリカ社会において、ユダヤ系移民の多くが金融業ではなく、不動産賃貸業において利殖を行ってきたというのです。


彼らユダヤ系移民は、まず自分が住むアパートの一室に下宿人を置き、食事を提供し、つまり家賃等の副収入を稼ぎ出しました。


その下宿人から得た副収入を頭金として、中古の小さな集合住宅を購入して賃貸不動産を増やしていったというのです。同書によると、当時典型的な物件として、3部屋付きの賃貸アパートに、両親と子供12人、その他に6人の下宿人が一緒に暮らすという事例もあったようです。そしてこの小さな住宅の家賃収入を貯めて、次にアパートを買い、次に小さなビルを買っていったというのです。


1920年代、つまり20世紀の前半には、米国で「大家業」として確固たる地位を築いたユダヤ系移民が少なくなかったようなのです。


ロス・チャイルド家に代表されるように、我々はユダヤ人というと、経済的に成功した者は皆、古くは両替商を営み、その後はいわゆる「金融業」を生業にして経済界での地位を築いていったものとの認識をもっていますが、実は、米国における多くのユダヤ人は、金融業ではなく、少なくとも近代アメリカにおいては不動産賃貸業によって財をなした者が多いといった事実があるようです。


私はこの事実を知って驚きもしましたが、やはり彼らもそうだったのかとえらく腑に落ちたのです。


次に、田岡一雄著「山口組三代目田岡一雄自伝」(徳間書店・田岡一雄著)にも、非常に興味深い逸話が出てきます。
田岡2代目山口組組長の時代、山口組は港湾事業だけでなく芸能関係の興行事業も広く手を広げていきました。

当初の興行の中心は、「浪曲」の興行、つまり有名浪曲師を呼び各地で公演を行うといったものが中心だったようです。

その当時の回想の中で、かつて一世を風靡したものの既にピークを過ぎ、病気で体が自由にならない旧知の興行師に対して、田岡組長がこう諭す場面が出てくるのです。
「なぁ、○○さん、芸人というのは、いつか落ち目になるときもある。その時に備えて、今のうちにアパートか旅館の一軒も持つ算段をして欲しいのや。」その後、この浪曲師は、田岡組長の勧めもあり老後に備えて数年後に旅館をもったそうです。
 

芸能人やスポーツ選手ほど、浮き沈みの激しい職業はないものだと感じています。
この田岡組長の話は、我々が聞けばそれはそうだろうと言うことになるのですが、とても不思議なことに、スポーツ選手でも芸能人でも、浮き沈みの正に「浮いた」時、つまり稼いだ時に不動産(アパートやマンション等々の収益物件)に投資したという話は、ほとんど聞いたことがありません。

野球選手やサッカー選手が、多額の契約金をもらった時になぜ高級外車を買ってしまうのか、逆になぜアパートを買わないのか、私には不思議でなりません。
「契約金でアパートを買うような人間は、芸能人としても、スポーツ選手としても、大物にはなれない」と言う方もいらっしゃるかもしれませんが、花の命のように彼ら彼女らの絶頂期も決して長くはないのです。

話は現在に戻って、私と同世代の女性タレントに岡本夏生さんという方がいらっしゃいます。若い頃にはレースクイーンやハイレグの衣装でバラエティー番組のアシスタントなどをされていました。しかし、バブル崩壊後おそらく10年以上テレビ等で彼女を見なくなりました。ところが近年また復活され、特異なキャラクターでバラエティー番組に時々出られています。


先日、何かの番組で共演者が「岡本さん、10年以上もの長い間芸能界を離れていたけれど、何をして生活していたの?」と質問されたところ、岡本さんは「実は私、家を三軒持っていて、その家賃収入だけで10年以上凌いできたのよ」と答えていました。共演者が再び「えー!そのお金はどうしたの?」と聞くと、彼女は、「当時この足を出したハイレグ衣装で稼いだお金をコツコツ貯めて家を買ったのよ」と。


私は、表面上派手に見える彼女のイメージとは異なる彼女が持って生まれた自己防衛本能と言うか、お金やその使い道に対する堅実さに感心しました。


芸能人やスポーツ選手ほどではないにしても、我々一般のサラリーマンやOL、また、経営者も同じ様な経済的な浮き沈みが必ずあるはずです。


言い方をかえれば、悪い時ばかりではないはずです。自分が浮いている時、つまりある程度経済的に稼げる時に、その稼いだお金を何に使うか、どう運用するかによって、その後の人生や、もちろん老後に大きく影響するのは、先の浪曲師同様、皆同じだと思います。


如何に「自分の経済」を長く持続し安定させるか、(勿論誰もができる訳ではないのでしょうが)その有効な方法の一つが賃貸ビジネスであるのは、洋の東西や時代を問わず間違いの無い事実だと感じます。


長谷川不動産経済社