Japan Far East Real Estate

Hasegawa Real Estate and Economy, Inc.

幾度目かの崩壊 ガラガラポンがやって来る

 これまでのバブルを振り返ってみると、マーケットにおいて振り子が大きく片方に振れすぎた時、その大きな偏りが崩れ去る兆候として、またはその崩壊を暗示するかのような出来事が起こってきたように思われます。

  

 私が社会人に成り立ての頃、母親から「NTT株の抽選に外れて、がっかりした」といった話を聞きました。東京の田舎の国立病院に務める50歳を過ぎた母親、それもこれまで一度も投資などしたこともない者からそんな話しが出ること自体に驚きました。

 証券会社の営業マンがNTT株の新規公開株を買わないかと病院に来たというのです。彼女曰く、職場の大勢の看護師がこのNTT株に応募したが誰も当たらなかったと。私には非常に奇異な感じを受けました。投資とか株といった話題を彼女の口から聞いたのは後にも先にもこれが最初で最後でした。1987年2月、看護師達の皆が皆、抽選に漏れたNTT株の売り出し価格は約119万円でした。上場当日は値がつかず、2日目にやっと160万円で初値がつきました。その後2ヶ月後には318万円まで高騰し当時の時価総額世界一を記録しました。

 

 しかし、その同じ年の10月に米国でいわゆるブラックマンデーが起こました。全国民が注目したNTT株は下落の一途をたどり、1990年初頭には不動産バブル崩壊も始まり、高値の3分の1以下の100万円を割り込んだのでした。

 

 私が過去においてもう一つよく記憶しているバブル崩壊の出来事は、1999年に起こりました。Windows95が1995年に発売、その翌年1996年に私自身、不動産コンサルティング会社を起業致しました。既に不動産業界はバブル崩壊の影響で右を見ても左を見ても焼け野原となっていました。

 そこで当時景気の良かったネット業界にあやかろうと、社名を有限会社デジタル不動産コンサルタントとしまた。ホームページを立ち上げた結果取材が殺到しました。同時に私は幾つかのインターネット系の会社に潜り込みました。そこで見たものは、私が不動産バブル崩壊前夜に不動産業界で体験したものよりも更に「酷い」ものでした。つまり、どの会社もデジタル系、マルチメディア系、ネット系であり、かつ有名大学を出て有名企業を退職した若手経営者が数年後の「上場」を掲げて莫大な資金を集め社会の注目を浴びていました。しかし、その内側に入って私が見たものは、一言で言えば「実態がない」ということでした。実態がないとは、お金を稼ぎ出す仕組みが見当たらないということなのです。全てネットに関連づけられていたサービスではありましたが、実態はどれもこれも全く収益を上げていないのでした。

 「これは間違いなく、近い将来崩壊する」と確信を得ました。そして、1999年にその崩壊がやってきました。いわゆる「ITバブル崩壊」です。

 

 これらの時代に起きたことと同じことが今米国の証券市場、特にIT関連において再び起きていると感じます。

 まさにバブル崩壊前を象徴する出来事の数々です。

 現在米国では、若者を中心にスマホを利用した株取引が盛んに行われています。1999年の頃でいうデイトレーダーの再来です。

 彼らが好んで使う証券会社がロビンフットなるアプリであり証券会社です。手数料が無料でその使い易さで人気があるようです。

 現在の米国の個人投資家は失業給付等の政府からの給付金を原資に取引を行い、その対象がGAFAやテスラのようなテック系の企業です。

 米国のIT系企業中心のナスダック市場の指数は、ITバブルと言われた1999年当時の2倍の異常になり、ご存知通り、新型コロナな発生後も上昇を続けています。

 初夏には、このロビンフットを利用してオプション取引をし7千万円以上の損失を抱えてしまった大学生が自殺したといった事件が起こりました。またその直後には、そのロビンフットが本社の窓ガラスを防弾仕様に変えたといったニュースも入ってきました。

 

 更には、現在米国では、SPAC(特別目的買収会社)、別名「白紙委任状会社」が次々と上場し莫大な資金を市場から集めています。これはこの言葉の通り、資産を何ら持たずに空箱のまま上場し、資金を集めてから将来有望と思われる企業を買収していくといったうたい文句で組成された空箱企業です。どんな企業を幾らでかつどんな条件で買収するかは経営陣に任せている、それゆえ白紙委任状会社と言われています。

 このSPACが買収して大きなニュースになった企業がニコラ・モーターというベンチャー系電気トラックメーカーです。なんと今年の6月にこのニコラを買収したSPACの株価は一時約3兆円にまで値上がりしました。しかし、実はこの電気トラックメーカーは未だ1台も完成品を市場で販売していないのです。

 更にはこの企業が製造したトラックが道を走る宣伝用の動画が詐欺的だと告発する企業調査会社が現れました。彼ら曰く、そのトラックの走行する動画はただ坂道を下っているだけでトラック自体は自力走行していないというのです。そしてニコラはその坂道走行を認めました。「弊社は自力走行しているとは言っていない」と。

 この企業が兆の単位の資金を集めているのです。何かが大きくおかしくはないでしょうか?

 

 直近の米国でのIT(テック)バブルの再来は1999年同様に近々破綻すると思われます。 

 ここのところ、早くも米国ナスダック市場で変調が起こっています。しかし、それを報じるニュースは「上がり過ぎた株価の調整」とか「今後も小さな乱高下を繰り返す」といった内容が多いようです。

 残念ながら、これから、いや既に始まることは「いっときの調整」などではないと思われます。それは正に1999年以来のI Tバブル崩壊の再来だと感じます。そのしてその影響、つまり大波は日本にも間違いなく襲ってくると思われます。

 

f:id:digicon:20200313174711j:plain

 

 そして今回は新型コロナという感染症の影響で経済が傷んだ状況下で起ころうとしています。その結果、新型コロナが今回の「崩壊」に加速をつけていると感じます。

 

 今回の幾度目かのバブル崩壊に関して、私は取引先や顧問先にここ数ヶ月警鐘を鳴らし、個別に対処方法をお伝えてきました。しかし、未だピンと来ない方も多いのも事実です。

 

 しかし、準備をするかどうかでその損害も大きく異なります。それは過去数回起きたバブル崩壊とその結果が既に証明してくれています。

 

 そして、崩壊の後には大きなチャンスがやってきます。何時の時代もガラガラポンに後には、ピンチをチャンスに変えて大きく飛躍する者が出てきます。

 我々は評論家ではありませんので、勿論その点においても最大限備えています。

 

長谷川不動産経済社

 

「不動産2.0」発売中

Amazon → http://u0u1.net/v6bg