Japan Far East Real Estate

Hasegawa Real Estate and Economy, Inc.

チャイナマネーの国外脱出と日本投資

 1997年に香港が英国より中華人民共和国へ返還される前から、香港脱出を夢見る若者は少なくなかった。

 香港映画界の有名監督ウォン・カーウァイが香港返還前に撮った名作には「恋する惑星」や「欲望の翼」がある。これら映画の中で香港を脱出し米国へ移住を試みる人物が複数登場する。

 おそらく当時から香港の将来に希望がもてない者が大勢いたのだろう。自分達の生活が将来の中国への返還でどうなるのか、それはまさしく大問題であったはずだ。

 

 さて現代の香港はどうなっただろうか。

 中国と英国との約束では少なくとも2047年まで一国二制度を維持し社会主義政策を実施しないことになっていたが、現在香港における言論や政治活動の自由は失われようとしている。

 このような状況下である程度資産をもつものはどういった行動を取るだろうか。

 やはり可能でれば自国からの脱出を試みるだろう。自らが脱出できなければ、先ずは子供を海外の大学へ留学させ、卒業後もその国で働かせてグリーンカードを取得させるのだ。最終的には自分達を呼び寄せてもらおうと。

 香港だけではく中国本土においても同じことを考える国民が大勢いる。

 現代、米国とメキシコの国境を越えてやって来る中国人不法移民が急増していると言う。中国国内で経済的に困窮した者が「自由」と「生活の安定」を求めて国境を越えて行く。

 

 自分や家族が自国を脱出すると同時に(又は別の選択肢として)もう一つやるべきことがあることがある。それは自国の資産を海外へ逃がすことだ。

 十年程前から東京都心部のマンション等にチャイナマネーが大量に流入している現状がある。

 ある司法書士によると、都心部のある大型分譲マンションの約20%が中国系の名称の名義だったことがあると。20%という割合は決して少なくない。

 

 彼らによる不動産の購入の特徴は、一つに投資目的であり自分たちが住むわけではない。よって価格は値上がり、または現状維持している分には保有を続けるだろう。しかし、一転不動産が下落基調となれば、迷わず売り一色となるだろう。

 自らが住む為に実需として購入している日本人は、多少価格が落ちても、すぐに売るという選択を取りづらい。

 しかし中国人投資家の考えはおそらくこうだろう「もうこれ以上自国に資産ももつことは不安である。自分が逃げ出すことができないならばせめても命の次に大事な資産を外国へ逃がそう」と。

 日本の不動産が上昇基調の時はよいかもしれないが、しかし、一旦下落基調になった場合、彼らの売り圧力は、躊躇のない強いものとなり、日本の不動産マーケットに大きな影響を与えるだろう。

 

 *上記コラムは2月23日発行の日刊ゲンダイ掲載されたものの元原稿です。

日刊ゲンダイ2月23日発売号

 

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