新東京邂逅記 by 長谷川高

厳しい時代を生き抜く為の資産防衛と不動産戦略

区分所有ビル(事務所)についての考察


先日、弊社の顧問先から区分所有ビル(事務所)への投資についてどう思うか?と質問されました。


「私ならよっぽどの理由がない限り投資しません」とお答えしました。


その理由は

  • 充分なマーケットが存在しない問題(換金性が低い問題)

区部所有のビル(事務所)においては、充分なマーケット(売買の市場)が存在しない。つまり換金性が低いのです。何らかの事情で、売りたい時にすぐに売れるのかと言えば、非常に難しいだろうということです。これが、売り手と買い手が充分に存在する区分所有のマンション(所謂中古マンション市場)とは大きく異なる点です。

  • 担保価値の問題

上記1)の通り、換金性が低い不動産故に金融機関からみても、常識的には担保価値が低いのではないかと思います。現在区分所有ビル(事務所)を購入する場合、融資する金融機関が存在するかもしれませんが、それはその不動産の担保価値を充分に認めてではなく、購入者である企業の「信用」を担保として貸しているのではないかと思われます。
仮に私が金融機関の担当者なら、不動産単体の担保価値でのみで融資するのは非常に怖いと感じます。当然ながら何か他の担保物件を同時に求めると思います。

  • 大規模修繕や建て替えの問題

上記1)の流動生が低い問題がどこから来るのかと言えば、それは、空調の故障、交換や外壁の修繕、屋上防水工事等々の大規模修繕工事の必要が迫られた場合、実際にこれをスムーズに実行できるのかといった危惧があります。

仮に10階建のビルとして、1フロアーに1所有者、合計10件の所有者(企業)の意見が合わない場合どうなるのでしょうか?
大規模修繕には4分の3の議決が必要ですが、3フロアーの所有者が反対した場合、大規模修繕は実施不可となります。
(こういった場合、反対者の反対理由は、「やる意義は認めるがお金がない」といったケースが殆どです。)
将来の建て替えも9フロアー以上の賛成が必要となります。
単独でのビル所有ならば、独断でできることがいちいち何でも皆さんと相談しつつ、議決をとらないとできない訳です。

総戸数、100戸、200戸の区分所有マンションとの違いはビルの場合、分母(戸数)が絶対的に少ない故に、1戸(1フロアー)の「反対票」が非常に大きい影響を及ぼすことになります。

  • 管理費滞納の問題

マンションでもよく、管理費の滞納が問題となりますが、10フロアーで仮に1フロアーの所有企業が破綻もしくは何らかの台所事情で、管理費が滞納された場合、どうなるのでしょうか?
1フロアーだけで、毎月必要な管理費の10分の1が未収となります。
おそらく、当分の間、残りの9法人でこの未収分を負担するしか方策はないと思われます。
この場合の最終的な解決は区分所有マンションの場合と同様に容易ではないはずです。

ここでも、総戸数の多い区分所有マンションと異なり、ビルの場合、分母(戸数)が絶対的に少ない故に、1戸(1フロアー)の滞納の影響が非常に大きく(10分の1フロアー滞納で総戸数200戸なら20戸分)、他の所有者に多大な負担を掛けることになってしまいます。


さて、上記の「よっぽどの理由」というのは、何かと言えば、
例えば、銀座の中央通り沿いの一等地に何が何でも(一部でも)所有権でビル(実際は「床」)をもちたいとか(つまり経済合理性よりも感情の部分が大きい)、将来の建て替えに絡んでいきたいといった、デベロッパー的と言いますか、ゼネコンの再開発部署の発想での投資でしょうか。



長谷川不動産経済社