不動産投資は誰にも容易にできるは大間違い
ここのところ、弊社を訪れて頂ける不動産投資家、又は資産家の方の相談は、新たに不動産投資をしたい(及び具体的な物件を調査してほしい)といった方ばかりでなく、数年前に投資した物件、または数十年以上前に投資した物件を売却するべきか迷っているといった方も増えきています。
つまり、(いったん始めたものの)「不動産経営をもう辞めたい」といったオーナーも増えているのです。
過去20年又は30年はアパート・マンション経営者にとっては良い時代でした。
現在では考慮しなければならない様々なリスクも殆ど気に掛けることなく、ある意味、誰でも(また何処でも)上手くいった(長期に渡りキャッシュフローを得られた)感があります。
しかし、これからの20年、30年のアパート、マンション、ビル経営は、それ程簡単ではないのは明白です。
その初歩的かつ基本的な要因をだけ挙げても
1)人口減少
2)1)による地方都市、郊外の過疎化(東京も例外ではなくってきました)
3)1)、2)による空室率の増加傾向
4)1)、2)による家賃の低下傾向
5)敷金の取り扱いの条例化等による「原状回復費用のオーナー負担」の増加
6)将来は更新料を取れなくなる可能性も・・・
と総論、大家業にとってマクロ的には良いニュースは一つもないのが現状です。
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先日、あるお客様から、中古の区分所有マンション1戸の投資案件について調査の依頼を受けました。
東京23区内の物件です。
旧分譲マンションですので一見、見た目は悪くありません。
約31平米の現状、空室のマンションでした。
当該物件の家賃は周辺の家賃の成約事例から約6.3万円程度と想定できました。
この家賃でも売り出し価格からは表面利回りは約11%と「安い?」と一見思わせる物件でした。
しかし、ネットの利回りを計算してみますと。
管理費や修繕積立金は分譲マンションなのでそれなりに(ある意味都心のマンションと大差ない費用を)取られます。
結果、家賃に占める管理費・積立金の割合は約20%にもなってしまいます。
更に、購入後毎年掛かる固定資産税+都市計画税、及び購入時に登録免許税や不動産取得税を価格にプラスして割り出したネット利回りは約7.5%まで落ちることが判明しました。
表面利回り11%→ネット利回り7.5%です。
さらにこの想定は、常に満室及び家賃の下落が起きないことを前提としての(まさに期待)「予想利回り」です。
よって今後将来に渡る収益を想定するには、周辺の賃貸マーケットの需給バランスを調べなければなりません。
調べた結果は、この物件が存する最寄の駅だけで40平米以下の(単身者向けの)募集物件は現状約160戸程度あり(実態は更に+50%以上は多いと思われます)、更に同じ沿線のより都心寄りの二駅には、同じく40平米以下の空室は各駅170戸以上ありました。
3駅合計約500戸以上の空室です。
その他詳しく調べれば調べる程、極めて賃貸市場のバランスが崩れているエリアであることは数字的かつその他客観的要因から明らかになりました。
そうなりますと5年後、10年後の想定される「家賃の下落分」とある程度の「空室率」を織り込まなければなりません。
仮に家賃が現在より約20%ダウンして、空室率も約20%と想定すると(周辺の賃貸マーケットの現状からするこれは決して厳し過ぎる仮定ではありません)ネット利回りは約4.5%まで下落してしまいます。
表面利回り11%→近い将来のネット利回り4.5%
この利回りですと、どうなのでしょうか?
流動性が遥かに高いリート(不動産投資信託)の中でも三菱地所、三井不動産、森ビル等々がスポンサーで(人気故に価格が高く)低い?利回りのリートに比べても劣ることになってします。
また、借り入を起こして投資した場合、借入金利が今後少しでも上昇した場合、借入金利≒ネット利回りという状態になり、最悪の場合、
借り入れ金利>ネット利回り
といた事態になることもあり得るでしょう。
この投資案件同様に
「数年後には、非常に高い確率でネット利回りが下落する物件」
が多く市場にあることをここ数年に調査によって肌で感じています。
皆さんの目の前にある(一見)「興味をそそる収益物件」は、売主からすると「今のマーケット下では既に魅力のなくなってきてしまった物件」であることが実は多いのです。
潤沢な現金がある方や給与収入が高い方は(借り入れを起こして)、収益物件を購入、投資すること自体は難しくありません。(ちなみに、銀行が貸すから良い物件ということは全くありません。)
しかし、そもそも今後は
「誰が何処に買っても上手くいく」ということは全くありませんし、
「誰でも成功する」ものでもないですし、
「不動産投資自体も簡単」ではない
という事実は改めてお伝えしておきたいと存じます。
昨今、弊社に来られるお客様の約5人の内1人の割合で、
「投資した物件を損切りしてでも売却したい」
という相談が持ち込まれます。また、お客様に代わって調査した物件の半数以上が弊社から見れば上記の物件同様「非常にリスクの高い投資物件」という結果でもあります。
これまで20年・30年の「大家さんに取って良い時代」とはうって変わって、今後20年・30年の大家業は、その難易度において全く違うものになると思います。
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